新緑の美しい季節。園庭の木々が恵みの雨を浴びて日を追うごとに青々と茂り、その生長の勢いは子どもたちの成長を見ているようです。園庭には、“びわ”“すもも”“ブルーベリー”“ジューンベリー”“かき”など実のなる木が幾つかあり、毎年、実がなるのを楽しみにしている子どもたちです。日常には食べるものがあふれていて、食に対する興味が希薄になってきていると言われる昨今、“食べたい!”という子どもたちの『食欲』を感じる瞬間はとても嬉しいものです。葉を茂らせ、花をつけ、実を結ぶ植物の生長を身近に感じて収穫を楽しみにできることはとても貴重な体験だと思います。ただ、お休みの間や、子どもたちが室内で活動している間に美味しいものをよく知っている鳥さんたちに実を食べられてしまうことも多々あります。それもまた、自然界の営みです。植物の生長を感じる時『子ども(Kinder)は、誠実な庭師(保育者)によって育まれる庭(Garten)の花々のように成長すべきだ』という、世界で初めて幼稚園を作ったフレーベルの言葉が思い出されます。
新年度が始まって一ヶ月が経ちました。初めての集団生活、初めてのクラス替え、初めての幼稚園…。初めてがたくさんあった4月でしたが、子どもたちは日々の繰り返しの中で好きなことを見つけ、自分の居場所を見つけつつあるようです。ただただ、自分の好きなことをして遊ぶ3歳児。クラス替えに戸惑いながらも、新しいおもちゃや友だち、先生と遊ぶ4歳児。年長児になった喜びを感じ、友だちと遊ぶ楽しさを味わいながら活動する5歳児。自分たちがそうしてもらったように、年長の子どもたちは不安そうにしている小さいお友だちに寄り添い、お話を聴いてあげたり、一緒に遊んだり、お部屋に連れて行ってあげたりしています。そして5月からは満3歳児保育も始まり、年少の子どもたちもお兄ちゃんお姉ちゃんになります。異年齢の交流を通して子どもたちの生活が豊かになることを嬉しく感じています。
戸外では、小さな虫たちが活発に活動をしています。緑の茂みに入ったり、プランターを動かしたりしながら生き生きとした表情で虫探しに没頭する子どもたちを観ると嬉しくなります。この夢中になれる時間が、子どもたちの感性を豊かにしてくれることは言うまでもありません。いつの時も、子どもたちの心を魅了する“だんごむし”は、子どもたちの緊張や寂しさを解きほぐしてくれます。その小さな命に、これまで何人の子どもたちが支えられてきたことでしょう。“だんごむしさんありがとう!!”です。ちょうちょやてんとうむしなど幼稚園に遊びにきてくれる小さな友だちに出会うと、子どもたちはまるで宝物でも見つけたような勢いです。子どもたちの心が動く瞬間がたくさんある季節、子どもたちと一緒に過ごせることに感謝して、共に心をふるわせる日々を積み重ねていきたいと思います。
園長 松尾 栄理香