2023.11.01

11月のたより

澄み渡る青い空に浮かぶ白い雲が映え、きんもくせいの香りが漂い…秋真っ盛り!自然がおりなす木々のグラデーションの美しさに、心ふるわせる季節となりました。日中は、汗ばむ陽気の日もありますが、朝夕は空気が冷たくなり、気温差が大きくなりました。この気温差が紅葉の美しさに大きく関係していることは知られているところです。暖冬といわれている昨今、秋の深まりが幾分ゆっくりのように感じていますが、今年はどんな自然の贈り物に出会えるのか楽しみです。

幼稚園でも、子どもたちから秋のお届け物が多くなりました。まつぼっくりにどんぐり、色づいた葉っぱ、道端で出会ったであろう草花など…大事そうに持って登園してくる子どもたちです。ある朝、大事そうにぎゅっと握った小さなてのひらから “どんぐり”が出てきました。「わぁ、どんぐりだね」と触ろうと手をのばすと、その子どもは差し出した手を後ろに引き『だめ!』と言わんばかりの表情。慌てて、「ごめんね。ちょっとさわりたかっただけだよ。とったりしないからね。」と声をかけました。そうなんです。子どもたちにとっては、この小さなどんぐりが宝物なのです。どんぐりと出会って、心を躍らせて握りしめていたその子どもの気持ちを思うと、申し訳なかったという思いと、どんぐりに寄せる愛しい純粋な気持ちがうらやましくもなりました。 “どんぐり”には不思議なパワーがあると感じていて、出会ったら「いいもの みっけ!」と思わず叫びたくなるような、そんなウキウキした気持ちになります。

園庭に、7~8年前に植えられた柿の木があります。当時、園児のお弁当に入っていた柿の種を園児が植木鉢に植えました。種は芽を出し、すこしずつ大きくなりました。園舎改築の際に園庭に移植してもらい、実がなるのかならないのか、その生長を見守っていました。 “桃栗3年柿8年” とはよく言ったもので、なんと今年初めて実をつけました。「えんちょうせんせい、ちょっときて!」と連日、柿の木の所に案内されて、園庭に実った柿の収穫をわくわくしながら待っている子どもたちのその様子を観るのも楽しみのうちの一つでした。柿の生長に心を動かす姿や、「はやくたべたい!」と食べることに貪欲になる姿からは“生きる力”をもらったようでした。

秋が深まるように、友だちとの交わりも深くなっていきます。年齢によって、その姿は異なりますが、自分の思いや考えを伝えながら友だち同士が交わり合い、遊びを発展させていきます。そうなると、遊びが継続するようになり、「あした、つづきしようね」「あしたも○○してあそぼう」と明日を楽しみに生活することが、また子どもたちの心を育んでくれます。そして、友だちとの交わりが深くなり、思いを伝え合う場面が多くなれば、これまでとは違ったトラブルや葛藤が生じることがあります。ただ、それもまた大切な経験です。幼児期の内にいろいろなトラブルに出会い、自分の気持ちや友だちの気持ちに向き合いながら折り合いをつけていくことは、とても貴重なことだと感じています。心が柔軟なこの年齢だからこそ、素直に謝ることができたり、許したりすることができると思うのです。そういった経験は、大きくなってトラブルに遭遇した時、問題解決をする糧となるのではないでしょうか。私たちは、そんな子どもの『心の育ち』に寄り添っていきたいと思っています。

園長 松尾 栄理香