2022.06.01

6月のたより

 風薫る5月から梅雨入りする6月へ。これからじめじめする日が続いたり、雨の日が続いたりすることを思うと、何となく心も曇りがちになります。しかし、恵みの雨により、緑も一層深くなり、植物たちもぐんぐんと生長し更に葉を茂らせ、生命力を感じる季節です。また、雨あがりの園庭では泥んこ遊びを満喫したり、空を見上げて改めて太陽の光に感謝したり、水の冷たさや気持ち良さを感じ、水と戯れることがより一層楽しくもなります。
雨の降る中登園した園児が、園庭に張っているUVカットシートの下に出来ている小さな穴を見つけました。「なんだこれは!おもしろいね~!これどうなってるの?」と言いながらしゃがみ込みしばらく眺めていました。そこには、シートから落ちてくる水のしずくによって地面に穴が開き、小さな水たまりができていました。その穴にリズムよくぽたぽたと“しずく”が落ちてきて、水に跳ね返る様子はとても美しく、“しずく”が踊っているようにも感じられ、ずっと観ていられるような空間でした。一緒に観ていた友だちが落ちてくる“しずく”をキャッチして、そのリズムが途切れると「なんで?」と上を見上げ「そういうことか~」と納得し、自分も同じように“しずく”をキャッチし、雨と戯れる姿はなんとも愛おしかったです。子どもたちのように、雨を楽しめる心のゆとりを持ちたいと思いました。弾むような子どもの声に、自然の贈り物をいただいた朝でした。子どもたちと一緒にいると、当たり前の日常の中に、不思議なことやわくわくするようなこと、自分の世界観だけでは見失ってしまうような出来事にもたくさん出会うことができます。

 ある日、子どものけがの手当をしていたところ「せんせいきて!」と声をかけられたのですがすぐには行けませんでした。処置が終わって「ごめんね、おまたせ。どこにいけばいい?」と尋ねると「もうだいじょうぶ!」という返事が返ってきました。そして、その子どもが指さす方を見ると、一人の子どもが泣いていてその傍らには保育者がいました。私に「きて!」と言ったのは、友だちが泣いていることを伝えるためだったのです。それが分かった瞬間、大変申し分けないことをしたと思いました。『小さいお友だちが泣いている。自分では声はかけられないけどなんとかしてあげたい!』と私を呼びにきてくれたのでした。「ありがとう。ちいさいおともだちがないているのをおしえてくれようとしたんだね。すぐにいけなくてごめんね。」と、謝りました。すると、『うんうん』と首を縦に振って安堵した表情で駆け出していきました。この時、「きて!」といった子どもに慌てた様子はなかったので、いつものように自分で作ったものを見てほしいのかな?と勝手に思い込んでしまったことを反省しました。子どもたちは、泣いている友だちや困っている友だちがいたら、必ず伝えてくれます。日々、子どもたちの姿から学ぶことばかりです。

園長 松尾 栄理香