10月中旬頃まで日中は真夏のような暑さでしたが、急に晩秋を思わせるような寒さとなりました。例年だと、どこからともなく金木犀の香りが漂ってきて秋の深まりを感じるのですが、今年はまだその香りに出会っていないような気がしています。めぐる季節の不安定さを感じずにはいられません。朝晩と日中の寒暖差に合わせるように、園庭の木々の先(葉)が色づき始めました。今年もどんな自然の贈り物が観られるのか楽しみです。
豊かな自然のお恵みといろいろな行事が盛りだくさんあり、子どもたちの心がこれまで以上にわくわくと動く11月。秋の深まりと共に、友だちとの交わりもぐ~んと深くなります。みんなで『ココロをひとつに』して臨んだ運動会を経験した子どもたちは、更に仲間意識が高まり、友だちとイメージを共有しながら遊びが豊かになっていきます。
「えんちょうせんせい!にせもののどんぐりみつけた!!」と新しい発見をしたとばかりに、意気揚々と一人の男の子が来てくれました。その手のひらには、皮が剥かれたドングリが。「これ、にせものなの?」と尋ねると、「うん!」と自信満々の様子。そして、ポケットからもう一つのドングリを出して、「こっちがほんもののどんぐり」と教えてくれました。よくお話を聴いてみると、お部屋にあったドングリを触っている時、からからと音がする事に気づき、もう一つのドングリは振っても何も音がしないことに気づいたようです。そこから、『この音の正体はなんだろう?』と興味津々で、先ずはドングリを叩いてみたけれど、もちろんそれぐらいでは割れることもなく、次に床に置いて勢いよく踏んづけたところ、見事に割れて中から茶色い実が出てきたそうです。そして、その実がなぜ“にせもの”だと思ったかというと、その出来事の前に友だちが持っていたドングリの中の実は、黄緑色だったことから色も違うし、マトリョーシカのように中から茶色の実が出てきたものだから、「これはにせもの!」と思ったというわけです。その一連の話をしてくれる子どもの表情はとても豊かでその興奮が私にも伝わってきました。そして「こっちがほんもののどんぐり!ほらおとがならんでしょ!」と確信をついたように話してくれました。「ほんとだね。おなじどんぐりのかたちしてるけど ふしぎたね。」と声をかけると「えんちょうせんせい これあげる」と言って皮の剥けたドングリを私にくれ、音のならないドングリを大事に握って去っていきました。後で、担任と話をすると、大事に握っていた音がならないドングリはお友だちからもらったものだそうです。このエピソードから、子どもたちにとって友だちの存在が大きくなっていることを感じ、そこに成長を感じました。
また、あるクラスでは運動会のトーチの係を決める際に、希望する子どもが多くなりあみだくじで決めることになりました。もちろん、くじなので当たる子どももいれば外れる子どももいるわけですが、決まった瞬間、外れてしまった子どもたちも含めてみんなが「よかったね」と拍手をして一緒に喜んだ。というエピソードがあったそうです。外れてしまった多くの子どもは残念な気持ちもあったと思いますが、その気持ちより友だちのうれしい気持ちを受け入れた姿に心の育ちを感じて嬉しかったと、担任が話してくれました。
友だちとの交わりにおいて上手くいくことばかりではないと思いますが、子どもたち一人ひとりが自分を大切にしながら友だちとの人間関係を築き、お互いに認め合い育ち合って欲しいと願っています。そのためにも私たちは、子どもたち一人ひとりと丁寧に向き合い、丸ごとを受けとめて安心できる環境を整えていたいと思っています。
園長 松尾 栄理香